人気ブログランキング |

奥沢文庫

motoki8787.exblog.jp
ブログトップ
2016年 09月 14日

桂解体 明暗崩し

石元泰博の桂・古書院(1960年撮影)を眺めているうちに不思議なことに気がついた。
明暗の具合がどうもおかしい。

ひとつ目、
障子の足元にくっきりと影が生じている。だから障子には直射日光が当たっている筈だが、
にも関わらず障子面の明度が低いのは裏側に雨戸があるから。ここまでは良いが、その
右側の壁(図面①)は開口部から遠いので本来であればもう少し暗くてもよい。

ふたつ目、
欄間越しに写る垂れ壁(図面②)が、妙に明るい。この部分は下の壁と同一面にあるから、
本来であれば同じ明度であるべき。床の間脇の垂れ壁にあっては金泥模様が白く飛んでし
まうほど明るい。まるで欄間越しに外の景色が見えるような錯覚に陥る。

みっつ目、
そして、画面の右下、ひときわ黒い影と白く輝く畳面。不思議なことは、その上に位置する
畳面(図面③)が暗いこと。本来であれば、外光の到来する側がより明るい筈。
さらに云えば、奥まった場所にこれほどシャープな影が生じるか?流石にここまで直射光は
届くまい。

四つ目、
画面右側、手前の襖面(図面?C)の金泥模様が輝くほどに明るい。外光から最も遠い面がこれ
ほど明るくなることはないだろう。ついでながら、カメラの背面側から外光が届くことは考え
にくい。
f0091854_10144149.jpg

きっと、自然光のもとに撮られた写真だと思っていた。明暗の戯れが最大化する瞬間を狙い長い
時間を待った、とも想像した。石元泰博の写真だから、なお、そう思った。ところが、実際は
どうやら違うようだ。恐らく反射板や照明を駆使し、明暗の序列を意図的に崩している。
(或は現像時に手を加えたか)

だからこれはイカサマ写真と云えなくもない。

この「明暗崩し」によって古書院のインテリアはバラバラに分解、断片化され、画面はまるで
天変地異の前触れのように不気味である。その断片は、白く飛んだ外の景色(彼岸)の中に、
今にも雲散霧消するかに見える。

石元は、古書院の一角を利用し桂を極限まで解体し、存在を消し去ろうとしたのではないか。
そう思えるほど、この写真は企みに満ちている。39才の石元が、どうにかして桂を征服したい
と目論み、その答えが「明暗崩し」だったと考えたい。

あらためて「桂」(丹下版)を開いたが、この1枚はひときわ異彩を放っている。否、異物と
さえ云える。石元はこの1枚により、秘かに桂を自家薬籠中のものとしたが、この手のものは
後にも先にもこの1枚。

逆立ちしても敵わない相手(桂)を前に、時としてイカサマは推奨される。




by motoki8787 | 2016-09-14 20:30 | デザイン | Comments(0)


<< グリーン車 輪切り断面       中野坂上で石元泰博の シカゴ/... >>