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奥沢文庫

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2015年 07月 08日

常滑見物

常滑は焼き物の町
かつて、ここで焼かれたスクラッチタイルが海路で東京に運ばれ、帝国ホテルの外装を
飾り立てた。

常滑駅の南東に小高い丘がある。丘に名前はないが、地名で云えば栄町2〜4丁目。
この丘の斜面地にはところ狭しと木造建物が建ち、屋根は互いに譲らず軒の出を競い
あう。昭和初期、ここは土管(排水管)の一大生産地だった。工場(こうば)には窯が築造
され、その脇には煉瓦積みの煙突が立った。大小無数の煙突は背比べし、煙を吐きな
がら上空を墨色に染めていた。人々は土まみれ、煙まみれ、汗まみれになりこの丘で働
き、生活していた。だからここは職住近接型の集落と云ってよい。

現在、窯は殆ど壊され、煙突のそばには窯跡が空虚な広がりとして残る。

南北300m東西200m程、この丘は30分も歩けば征服できる。丘には細い路地が迷路
のように巡り、急坂だったり階段だったりするから車は進入できない。急に視界が開けたり
閉じたり、ある場所では谷地を見下ろし、ある場所では煙突を仰ぎ見て、短時間の街歩き
は変化する景色に飽きることがない。
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ところで、丘の街に天を衝く工作物が林立する様子はイタリア・トスカーナ地方のサンジミ
ニャーノに似てはいまいか。サンジミニャーノには煙突に代え、塔が建つ。
とは言え、常滑は木造建物、煉瓦積み煙突が建つ製陶工場の集落、サンジミニャーノは
石造建物、石造の塔が建つ中世城郭都市である。サンジミニャーノの塔はその高さで権勢
を競い、常滑では生産量の多寡が煙突の高さを決めていた。
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街のありようはあまりに異なるが、丘のスケールはほぼ同じと見てよく、街歩きの楽しさは
互角だろう。そして、常滑の窯跡は(空虚な広がりだが)中世イタリアの街に御馴染みの
Piazza(広場)に見えなくもなく、両者を対照しながら歩くと、常滑見物はなお楽しい。
f0091854_22213149.jpg

斜面地に発展する集落は日本でもそう珍しくないが、生産工場がわざわざ斜面地を選び
集合した理由は何だろう。粘土、燃料の薪、完成した土管、何れもみな重いものばかり
だから運搬は容易ではなく、だから、自然発生的にこの地に集まったのではないだろう。
行政の施策がこの不便な丘を生産の場として指定したような気がするが、果してどうか。

ともあれ、現在、この丘には若者達がよそから入植し、朗らかに歴史を引き継いでいる。
車が進入できず利便性を欠いているからか、低俗軽薄な商業が寄り付かないことは歓
迎すべきことである。観光地化しているわりには街が良く保全され、常滑の街歩きはもっと
注目されてもよい。

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by motoki8787 | 2015-07-08 22:23 | 風景・街あるき | Comments(0)


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