奥沢文庫

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2012年 02月 05日

旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)のこと

  旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)にゾッコン、という訳ではないが、随分と通った。
廻りの来館者はいつも「素敵だわ...」と囁きながらため息を漏らしていた。しかし、
手放しでは賛同できない、「なんか変だな〜」が、いつもあった。

 この建物の室内装飾は、当時のフランスを代表するインテリアデザイナー、
アンリ・ラパン、そしてガラス作家ルネ・ラリックが手掛けた。二人共、1925年の
パリ万博(通称アール・デコ博)では、中心的役割を果たし、だからこの建物は
「アールデコの館」と説明されている。
 ところが、ここにはフランスの香りを感じることができず、また、アール・デコ本来
のドライでスピード・アクティブな感覚も見当たらない。それどころか、困ったことに、
何かが沈潜し、湿り気さえ感じる。古い洋館がいつも持つカビ臭さとは別に、部屋
の隅々に澱が溜まり、何かが宿っているようにさえ感じる。

 ところで、全体の設計を総括したのは宮内省の内匠寮(宮家の建物を設計する
組織)だが、彼らは、(朝香宮家が招聘した)異国の気鋭デザイナーの意向を最大限
、尊重しなければならなかった。
 一方、彼らは宮家の伝統を受け継ぐ設計組織でもあるから、アール・デコ新様式を
前に、(きっと頭をクラクラさせながらも)何とかして日本的なるものを「合わせよう」と
たくらんだに違いない。

 つまり、アール・デコを相手に意地を張った !?

 そんなことを想像しながら館内を歩き廻っていると、案の定、妙なものに気付くことになる。

 それは主要な部屋に繰り返し、(しかし遠慮がちに)現れる木製の丸柱。直径、僅か
12センチ程、従って構造的な役割を担うことはなく、だからこの柱は単にデザインの為
に登場する。
 そして、この丸柱が大理石ではなく、木製 (しかも、素地のヒノキ !) であることから、
和式 (云い方を変えれば神道式) とも云える気配を放っている。今でこそヒノキの肌理
は日に焼けているが、竣工当時には(恐らく)真白い肌を曝していたことを想像すると、
ドキッとする。
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つまり、
当時、世界を席巻していたアール・デコ様式を相手に、内匠寮の意地の結果が
この丸柱、とみるべきだろう。柱頭に、菊の御紋の巻かれていることが、(きっと)その証。
 (これは、コリント式オーダーのモチーフ、アカンサスへのオマージュだろう、きっと。) 

 この丸柱の違和感に賛否はあるだろう。特有の気配の為に、この建物はアール・デコ
の亜流、徒花(あだばな)と云う向きもあるだろう。
 しかし、どこの国でも異文化を受容する際には、手間取り、混乱、迷走がきっとある。
そしてなにより、彼の地ではなく、こちら側での出来事なのだから、そもそも相手方の
規範(code)に合わせる必要も顔色を窺う必要も、実はない、と考えると気が楽になる。
 そんなことから、この建物に感じていた「なんか変だな〜」も、一旦は飲み込むことに
しよう。そして、「デザインの黒船」を前にした彼らのトライアルに拍手を送ることにしよう。

※昨年2011年11月から長期改修工事が始まり、2014年にリニューアル
  オープンする予定。次回はどのように感じ、どのように読めるのだろうか....楽しみ。
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by motoki8787 | 2012-02-05 20:18 | 建物雑記 | Comments(0)


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