奥沢文庫

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2018年 03月 18日

つる瀬・むすび梅

湯島の和菓子屋・つる瀬の「むすび梅」(オコワ)のこと。

上にチョコンとのる小梅(梅干)が天満宮の梅の実かどうか分からないが、宮城

県産もち米の間には北海道産・大粒の大豆がゴロゴロ入り、中央には甘辛い切り

昆布が挟まる。諸国から食材を呼び寄せ、手のヒラにのるオコワにまとめてしまう、

というなんとも日本的な趣向。

つる瀬は包装のカタチにもこだわりデザインしたが、フラットに展開して初めて
「ああなるほど、こんなカタチをしてたのか」とさりげなく、この手間取りも
また、日本的。

関西にも同様があり、大阪・絹笠の「とん蝶」がそれらしい。関西の趣向はどん
なだろう。

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# by motoki8787 | 2018-03-18 20:42 | 食べた・飲んだ | Comments(0)
2018年 01月 21日

新幹線の座席(300系)

東海道新幹線(300系・1992年以降)の3人掛け座席

真ん中の座席は両側に比べ幅が少し広い。その寸法は僅か3センチだが、
こういうところでの3センチの効果は大きい。また、目の前の背もたれ幅は
7センチも広く、視覚的な広さによる効果も見逃せない。
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「中央席は窮屈だ」という問題を取り上げた設計者(技術屋)の良心を経営陣
(事務屋)が理解、尊重した結果、実現に至ったのだろう。

航空機の座席ではこのような工夫は(恐らく)ないと思われ、この「思い遣り
デザイン」はいかにも日本らしい。
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# by motoki8787 | 2018-01-21 15:52 | デザイン | Comments(0)
2017年 12月 24日

慈光院へ(天空の書院)

「景観の構造」(樋口忠彦著 技報堂出版1975年)に慈光院の写真(撮影・水島
孝)がある。縁側越しに外を望むその写真は、モヤがたちこめた町と遠くの山並
みを見事に切り取り、まるで一幅の墨絵を見るよう。左手には近景として低く剪
定されたクロマツが写る。

ところが、この景色には中景がない。「借景」の原論を云えば、中景が遠景の山
並みを引き寄せ、景色の繋がりを担保するのだろうが、ここではいきなり遠くを
望んでいる。加えて、その山並みがいかにも遠い。そのような距離感からか、ま
るで雲上に居るような錯覚を覚え、ここはきっと「天空の書院」だ、と思い込ん
だ。

実は学生時代、一度、慈光院を訪れていたがその時の記憶が全くなく、この写真
がいつの頃からか「私の慈光院」となり、長く再訪の機会を窺っていた。このよ
うな写真が撮れる建築はいったいどのような断面、寸法を持つのだろうか。

10月の雨の日、4本の電車を乗り継ぎ慈光院へ向かった。慈光院は、低い丘の崖
淵に建っていた。

書院は東と南の二方向に開き、大きな縁側を持つ。縁側の幅はたっぷり1間あり、
深い軒先が天空を大きくカットし、張り出した縁先と共に景色を低く絞り込んで
いる。縁側はまた、その天井の暗がりによって景色を明るく引き立てる。これは
古建築にお馴染みの明暗のコントラストだが、この書院での効果は群を抜いてい
る。東には奈良盆地と山並み、南には片桐石州の庭を額縁に納め、首を回せば
120度、まるでパノラマ写真を見るようだ。
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注目すべきは広縁の柱のスパン(柱間)が3間も飛んでいること。つまり、隅部
に立つ1本の柱を除き、景色を遮るものがない。京間の3間だから、その寸法は
5940ミリ、ほぼ6mにも及ぶが、これだけのスパンは日頃見慣れない。おそらく
尾垂木(天秤梁)が軒桁を補助している筈、と勘繰ったが見当たらず、僅かh=
80ミリ程度の太鼓梁が架かっていた。

そして、軒の高さがとにかく低い。縁側の鴨居の高さは(書院畳から測ると)
1655ミリしかなく、目の高さに近い。そのあまりの低さに、書院に足を踏み入れ
ると、思わず腰を落とし視線を下げてしまうほど。

採寸を申し出たところ奥から住職が現れ、縁側の幅も測ってみてはどうか、と仰
る。するとどうだろう、縁側(南)の幅が東端で10センチほど広がっている。奥を
絞り遠近を強調する手法には馴染みがあるが、ここでは逆に手前が絞られ奥に広
い。しかし、手掛かりとなる壁がないからか、または僅かな寸法だからか、その
果は殆どなく、住職もこの不思議には頭をひねっていらした。

写真に比べ、町には樹木が出現し中景の役割を果たしていた。ほかに鉄塔、中層
建物が景色に割り込んでいた。景色の変化は続くのだろうが、この書院はこれか
らもその時々のパノラマを撮り続けることだろう。

ほかに、慈光院の庭には軒高さほどの巨大な「大刈込」(オオカリコミ・多種類
の樹木を寄せ植えし量感ある形に刈り込んだもの)があり、これまた見応え十分。



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# by motoki8787 | 2017-12-24 16:17 | 建物雑記 | Comments(0)
2017年 09月 20日

吉備津神社へ

吉備津神社(岡山市北区)は備中、一宮神社。

吉備中山(御神体の山、標高161m)の麓に建つ。遠く、東側から眺めると、密生
する樹木を背景に、奇異な屋根がぽっかりと宙に浮いている。その屋根の総幅は
26mにもおよび、両翼はシャープに跳ね上がる。普通のヤシロなら鈍重に見える
屋根がここではスピード感あふれ、その様子はまるで宙を滑る飛翔体(巨大宇宙
船)のよう。並列する三角屋根が2気筒エンジンに見えると、マシンのスピード感
がさらに増す。

もともと神社の屋根はその下の内部空間とは何の関係も持たない。「~造り」と
いう類型化された屋根の中から、そう大きな事情によらず選ばれる。ところが、
この神社の屋根はどの型にも属さず、「比翼入母屋造り」またはここに唯一であ
ることから「吉備津造り」とも呼ばれる。

そのような屋根の下、本殿の内部を見ると神社建築には珍しく立体的な構成であ
り、その断面が興味深い。内部の床は奥にゆくに従い徐々に高まり、最も奥の
「内陣」は地面から6mもの高みにある。一般的に内陣は二重三重の結界により平
面的に隔離されるが、ここではそれに加え、高さ方向に順位を持つ。御神体は背
伸びしても届かない、遥か彼方に浮かんでいる。

他の特徴として、この神社は高い「亀腹の基壇」に建つ。また、「大仏様(重源)
」の組物が軒の出を支える。何れも寺院建築の様式だが、これらが何喰わぬ顔で
ヤシロの屋根の下で同居する。
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「奇妙で巨大な屋根」は見られることを強烈に意識し、示威的と云える。「内部
の立体的構成」は序列を指向し、権威的な体質を象徴する。そして「寺院様式の
混淆」は、なりふり構わず図々しい。何れもその目的は、民衆の耳目を集め、他
の神社の度肝を抜くことではなかったか。

祭神がヤシロの意匠をそのように仕向ける訳もなく、氏子集めで他を圧倒しよう
とした誰かが企んだ。その誰かとは、当時この辺りで権勢を誇っていた鋳物師集
の有力者だったかもしれない。


その企みは成功したから良いようなものの、一歩間違えると醜い異端児として神
社建築の系譜から外れていたかもしれない。そんな危うさを手堅く凌いだからこ
そ今日の姿があるのだろう。

この神社は豪胆であり、したたかである。

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# by motoki8787 | 2017-09-20 16:19 | 建物雑記 | Comments(0)
2017年 08月 30日

資生堂アートハウスへ

下り東海道新幹線が掛川駅を通過して1.4Km、左手60mほどに資生堂アートハウス
が建っている。時速300Kmだからたいていの人は見逃すが、運が良いと銀色のラス
タータイルが閃光のようにフラッシュする。

遅ればせながら、この名建築(1978年、設計・谷口吉生)を見てきた。

建物は「丸い部屋」と「四角い部屋」からなり、S字状に連続する柱が両者を牽
引する。まるで、幾何形態の綱引きを見るようだ。

「丸い部屋」には四角い空間が、「四角い部屋」には丸い空間が「入れ子」とな
り、この「反転関係」が両者の違いを強調する。「反転関係」は光の取り入れ方
にも見られる。丸い部屋には地を這う光が滑り込み、四角い部屋では中央に圧縮
された光が四方に拡散する。採光方法の違いにより、両者の対照がさらに際立つ。
谷口が云う「メビユスの輪に入ったような錯綜した空間」とはこの「反転関係」
のことだろう。

このように両者は反転、逆転関係にある幾何形態だが、一方、断面を切ると「天
井高さ」と「連窓の高さ」は統一されている。共通の高さが備わることで両者は
強く束ねられ、異なる2つが1組のまとまりに見えてくる。高さの規範が全体を
統合している点に注目すべき。

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そのようなところ、この建物にはレベルの異なる3つの床面があり、順路に従い
スロープを上り、または階段を下ると視点の高さは120センチ毎に変化する。
内部の景色が外の景色と共に豊かに変化し、目を奪われる。展示物鑑賞がおろそ
かになることは考えものだが、視点の上下移動という仕掛けはこの建物の画竜点睛
と考えたい。


隅々まで計画、配慮されていたが、決して過剰ではない。このような建物は訪れる
者を清々しい気分にさせてくれる。資生堂アートハウスはその名の通り美しく均整
がとれ、瑞々しかった。




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# by motoki8787 | 2017-08-30 10:56 | 建物雑記 | Comments(0)