奥沢文庫

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2018年 12月 12日

コロナブックス「谷口ジロー 描くよろこび」

平凡社からコロナブックス「谷口ジロー 描くよころび」が出版。

谷口ジローの仕事場を実測・作図しました。仕事場は何の変哲もない、普通のマ
ンションの一部屋。作品空間を徹底的に描き込んだ谷口でしたが、自身の仕事場
を飾り立てることには無頓着でした。

漫画家の仕事場の実測・作図は2度目でしたが、谷口の画力に啓発され、デスク
周りの詳細図を加えることに。また、谷口がスクリントーン使いの名手であるこ
とを知り、敬意と哀悼の意を込め真似させて頂きました。が、これは上手くいかず、
鉛筆で陰影をつけることに。そして、Gペンに初挑戦。線の太さに強弱がつき、
絵に立体感が生まれました。これら初めての試みを理解していただいた編集者に
は感謝です。
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電車で漫画を読む人を観察していつも気になっていたことは、そのスピード感。
視線は誌面を滑り、飛ぶように早く、物凄い速さでメージがめくられる。何故あ
あも荒い読み方か?雑な読み方か?

ところが、谷口の作品にこの読み方は通用しない。

谷口の作品世界は、読むほどに調べるほどに新鮮だ。なかでも、谷口が若い頃から
影響を受けていたBD(バンドデシネ)(※注)は、荒い読み方とは無縁の表現様式。
こんな漫画世界があることを初めて知りました。

編集は小出真由子+佐藤暁子(平凡社・コロナブックス編集部)

(※注)BD(バンドデシネ) bande dessinée 仏語
フランス語圏での漫画を示す総称。カラーで描かれ大判サイズで出版されること
が多く、ハードカバーのことも。「9番目の芸術」として批評や研究の対象となっ
ている。


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# by motoki8787 | 2018-12-12 19:57 | お仕事 | Comments(0)
2018年 12月 09日

「三番町 共用会議所」へ

「共用会議所」なる聞き慣れない名称。ここは各省庁が文字通り「共用」して
用する会議室らしい。室内の設えからすると上級職が利用する。大江宏(当
時41歳)の設計により1954年、千代田区三番町に竣工。

この建物は、日本には珍しく優れた「回廊建築」と云える。回廊は諸室をL型に
囲み、(設えは高級だが)元来がつまらないお役所施設に命を吹き込んだ。発注
者は、質素だが華やかな建築を思いがけず手に入れた。
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回廊の柱の直径は僅か250φ。普段、見ることのない寸法に思わずため息。この細
さで足りるのは、床版が(堅牢な)本体に拘束されているから、そして鉛直荷重
だけを負担するから。柱にひび割れや補修跡が皆無だから、現在の構造設計基準
でも成立すると考えたい。

その柱の割付は均等ではない。スパンに長短があり、その比率は1対2、この回
廊の最大の魅力の1つと云える。このような柱の扱いは日本建築に見当たらず、
大江は恐らくミケランジェロ、パラディオなどルネサンス後期~マニエリスム期
の建築から啓示を受けたのだろう。

回廊天井の木毛セメント板は肌色に塗装されている。外部の天井だから断熱材は
必要なく、ここでは意匠目的で利用されている。予算の無いところ、「天井打ち
込み」というルーチンで安価な工法のお陰で、冷たいコンクリート仕上げの中に
暖かく柔らかいテクステュアが出現した。
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床はテラゾーで仕上げられ、桜色の桝形パターンが繰り返される。一方、天井の
木毛セメント板はコンクリートで縁取られ、櫛形パターンを繰り返す。このよう
な平面パターンによるグラフィカルなデザインは、構成要素の少ない建築ではひ
ときわ目を引き、空間構造を力強く飾り立てる。このことはモダニズム建築の特
徴の1つと言える。

空調設備の後補は別として、意匠がこれほど新築時と変わらないことは珍しい。
築60年を超えると改変により満身創痍である筈のところ、このことは奇跡に近い。
完成したものを再考することに不得手なお役所仕事が、ここでは幸いした。










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# by motoki8787 | 2018-12-09 19:06 | 見た・観た・聴いた | Comments(0)
2018年 12月 09日

「三番町 共用会議所」へ

「共用会議所」なる聞き慣れない名称。ここは各省庁が文字通り「共用」して
用する会議室らしい。室内の設えからすると上級職が利用する。大江宏(当
時41歳)の設計により1954年、千代田区三番町に竣工。

この建物は、日本には珍しく優れた「回廊建築」と云える。回廊は諸室をL型に
囲み、(設えは高級だが)元来がつまらないお役所施設に命を吹き込んだ。発注
者は、質素だが華やかな建築を思いがけず手に入れた。
f0091854_19034267.jpg

回廊の柱の直径は僅か250φ。普段、見ることのない寸法に思わずため息。この細
さで足りるのは、床版が(堅牢な)本体に拘束されているから、そして鉛直荷重
だけを負担するから。柱にひび割れや補修跡が皆無だから、現在の構造設計基準
でも成立すると考えたい。

その柱の割付は均等ではない。スパンに長短があり、その比率は1対2、この回
廊の最大の魅力の1つと云える。このような柱の扱いは日本建築に見当たらず、
大江は恐らくミケランジェロ、パラディオなどルネサンス後期~マニエリスム期
の建築から啓示を受けたのだろう。

回廊天井の木毛セメント板は肌色に塗装されている。外部の天井だから断熱材は
必要なく、ここでは意匠目的で利用されている。予算の無いところ、「天井打ち
込み」というルーチンで安価な工法のお陰で、冷たいコンクリート仕上げの中に
暖かく柔らかいテクステュアが出現した。
f0091854_19010133.jpg
床はテラゾーで仕上げられ、桜色の桝形パターンが繰り返される。一方、天井の
木毛セメント板はコンクリートで縁取られ、櫛形パターンを繰り返す。このよう
な平面パターンによるグラフィカルなデザインは、構成要素の少ない建築ではひ
ときわ目を引き、空間構造を力強く飾り立てる。このことはモダニズム建築の特
徴の1つと言える。

空調設備の後補は別として、意匠がこれほど新築時と変わらないことは珍しい。
築60年を超えると改変により満身創痍である筈のところ、このことは奇跡に近い。
完成したものを再考することに不得手なお役所仕事が、ここでは幸いした。










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# by motoki8787 | 2018-12-09 19:06 | 見た・観た・聴いた | Comments(0)
2018年 09月 25日

小鹿田(onta)焼の集落へ(唐臼)

小鹿田焼は九州のほぼ中央、日田市の皿山地区で作られている。市内から車で
30分ほど山あいを進むと、集落が忽然と姿を現わす。


 集落の規模は小さく、頂部から右左にカーブする坂道を下り歩くと5分もかか
らず外れに至る。集落は13戸からなり、3戸(酒屋、大工、蕎麦屋)を除き、残
り10戸はすべて窯元。窯元は組合をつくり、外部からの職人流入を退ける。

 各窯元は屋号を持つが、独自の作家活動は許されない。だから陶器の裏側に刻
印はないが、その代わり、ここから出荷されるすべてに「小鹿田焼」の商標がつ
く。ここでは民藝がいまだに息づいている。

 水力による唐臼、足で回す蹴ろくろ、薪を使った登り窯、小鹿田焼には機械が
使われない。これだけの山奥、しかも僅か10戸の閉鎖的な共同体が、昔ながらの
方法により今日も生産を続けていることに驚く。

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 当たり前だが、山間集落は渓流のあるところに発生する。

 水量が少ない渓流でも、堰き止めると水が溜まり、堰の高さまで水位が上がる。
堰が高いほど水位は上がり、配水の守備範囲は広がる。

 この集落にも大小沢山の堰が築造され、生活用水、そして唐臼の動力源として
利水されている。唐臼小屋の上流には必ず堰がある。
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# by motoki8787 | 2018-09-25 11:55 | 風景・街あるき | Comments(0)
2018年 08月 15日

能登の「間垣(まがき)」

能登半島は北に突出する印象だが、実は上半分が大きく東側へ傾いている。その
内側(南東)は富山湾を囲み、海は穏やか。対して、反対側(北西)は風が強く、
季節を問わず海には白浪がたつ。とりわけ冬は大陸から季節風が猛烈に吹き降
し、海は荒れ狂う。このような厳しい気候風土、海沿いの集落にはどこから伝わ
ったのか、古くから生活を守る夫があった。

輪島の南西約10Kmに大沢集落、上大沢集落がある。季節風のあまりの強さに、防
風林が育たないのだろう、「間垣(まがき)」という高さ5mほどの工作物(防風
垣)が集落を囲み、独特な景観をつくる。屋根が隠れてしまうから、もし沖合か
ら眺めると城壁の連なりのようにも見え、日本の風景としては珍しい。

「間垣」には杉丸太と、近くに自生するニガタケが利用される。丸太を地面に建
(掘立柱)、そこに横桟を架け渡しニガタケを葺く。「間垣」は住戸ごとに作
れるから骨の組み方はいろいろだが、表側から見ると高さは揃い、連続面を形
する。
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根元の直径、僅か2cm程のニガタケは一列に並ぶが、隙間から風が通り抜ける。
また、穂先の密集する頂部は揺動して強風を漉し取る。つまり、「間垣」は風
遮断するものではなく、そのエネルギーを柔らかに抑える仕掛けと言える。

隙間のない防風壁の場合、風下に渦巻きが生じ風が滞留し、また気流の剥離がよ
り強い強風部分を生み出すという。一方、「間垣」のように隙間のある場合、風
速が大幅に減じることはないものの、風速が一定程度減少する領域が広範囲に生
まれるようだ。

小径のタケを利用した防風垣は、台風直撃を受ける九州地方でも畑作地を守る目
的で作られるが、高さが5mにも及び、集落そのものを囲むものは、能登の「間
垣」の他に見当たらない。

ニガタケは3年に一度、杉丸太は10年に一度の更新を要する。このような短期間
の更新、しかも手仕事による更新を前提とするインフラストラクチュアは、今の
時代、あからさまに遠される。しかし、「間垣」の文化的景観としての価値は
高く、長く存続してほしい




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# by motoki8787 | 2018-08-15 16:30 | 風景・街あるき | Comments(0)