2018年 12月 17日
平凡社から一条ゆかり「有閑倶楽部」を旅する(太陽の地図帖)が出版。 「有閑倶楽部」は一条ゆかりの代表作の1つ、1981年「りぼん」(集英社)で連 載が開始された。この本は、「有閑倶楽部」を解き明かす虎の巻。 当初、アトリエを実測予定でしたが、急遽、LDKに変更。アトリエも拝見しました が、LDKを取り上げたことは読者にとって大正解。 LDKの内部空間に住み手の「したたかさ」を感じました。 具体を云えば、 ① 半階ずらしの構成 ② 外部に対し、閉じつつ開く手法 ③ 採光を補完する半外部空間 これらは、いずれも狭小敷地の都市住宅に有効な手法。外観との整合性に?がある ものの、それでも一条の「こうしたい!」が実現し、おそらく本人の満足度は高い。 そう!作家は家づくりにも「したたか」だった。 実測図に一条作品のキャラクターをチャッカリ拝借、絵が生き生きと。このような、 住み手のアイコンを取り入れる方法に、今後の可能性を感じました。これを手掛かり に、新しい実測図のあり方を探ります。 一条のことは勿論、知りませんでした、少女漫画家ですから‥
「有閑倶楽部」と一条の作品を示す断片は、以下の通り(本誌から抜粋) 有閑倶楽部は コメディタッチの漫画 とにかくゴージャス 奇想天外な物語 雑多に文化を散りばめた作品 文化資本をさずけてくれた 一条ゆかりの漫画は、 容赦ない大人の漫画 子供騙しが一切ない 読者に大人の世界の心構えを促す ページをめくりさえすれば未来を思うことができた 編集は飯倉文子+佐藤暁子+小出真由子 (編集人 日下部行洋) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ #
by motoki8787
| 2018-12-17 23:01
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2018年 12月 12日
平凡社からコロナブックス「谷口ジロー 描くよころび」が出版。 谷口ジローの仕事場を実測・作図しました。仕事場は何の変哲もない、普通のマ ンションの一部屋。作品空間を徹底的に描き込んだ谷口でしたが、自身の仕事場 を飾り立てることには無頓着でした。 漫画家の仕事場の実測・作図は2度目でしたが、谷口の画力に啓発され、デスク 周りの詳細図を加えることに。また、谷口がスクリントーン使いの名手であるこ とを知り、敬意と哀悼の意を込め真似させて頂きました。が、これは上手くいかず、 鉛筆で陰影をつけることに。そして、Gペンに初挑戦。線の太さに強弱がつき、 絵に立体感が生まれました。これら初めての試みを理解していただいた編集者に は感謝です。 電車で漫画を読む人を観察していつも気になっていたことは、そのスピード感。 視線は誌面を滑り、飛ぶように早く、物凄い速さでメージがめくられる。何故あ あも荒い読み方か?雑な読み方か? ところが、谷口の作品にこの読み方は通用しない。 谷口の作品世界は、読むほどに調べるほどに新鮮だ。なかでも、谷口が若い頃から 影響を受けていたBD(バンドデシネ)(※注)は、荒い読み方とは無縁の表現様式。 こんな漫画世界があることを初めて知りました。 編集は小出真由子+佐藤暁子(平凡社・コロナブックス編集部) (※注)BD(バンドデシネ) bande dessinée 仏語 フランス語圏での漫画を示す総称。カラーで描かれ大判サイズで出版されること が多く、ハードカバーのことも。「9番目の芸術」として批評や研究の対象となっ ている。
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by motoki8787
| 2018-12-12 19:57
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2018年 12月 09日
「共用会議所」なる聞き慣れない名称。ここは各省庁が文字通り「共用」して 利用する会議室らしい。室内の設えからすると上級職が利用する。大江宏(当 時41歳)の設計により1954年、千代田区三番町に竣工。 この建物は、日本には珍しく優れた「回廊建築」と云える。回廊は諸室をL型に 囲み、(設えは高級だが)元来がつまらないお役所施設に命を吹き込んだ。発注 者は、質素だが華やかな建築を思いがけず手に入れた。 回廊の柱の直径は僅か250φ。見慣れない細さに驚くが、この細さで足りるのは、 床版が(堅牢な)本体に拘束されているから、そして鉛直荷重だけを負担するか ら。柱にひび割れや補修跡が皆無だから、現在の構造設計基準でも成立するのだ ろう。 その柱の割付は均等ではない。スパンに長短があり、その比率は1対2、この回 廊の最大の魅力の1つと云える。このような柱の扱いは日本建築に見当たらず、 大江は恐らくミケランジェロ、パラディオなどルネサンス後期~マニエリスム期 の建築の柱割からヒントを得たのだろう。 回廊天井の木毛セメント板は肌色に塗装されている。外部の天井だから断熱材は 必要なく、ここでは意匠目的で利用されている。予算の無いところ、「天井打ち 込み」というルーチンで安価な工法のお陰で、冷たいコンクリート仕上げの中に 暖かく柔らかいテクステュアが出現した。 木毛セメント板はコンクリートで縁取られ、櫛形パターンを繰り返す。このよう な平面パターンによるグラフィカルなデザインは、構成要素の少ない建築ではひ ときわ目を引き、空間構造を力強く飾り立てる。このことはモダニズム建築の特 徴の1つと言える。 空調設備の後補は見苦しいが、意匠がこれほど新築時と変わらないことは珍しい。 築60年を超えると改変により満身創痍である筈のところ、このことは奇跡に近い。 完成したものを再考することに不得手なお役所仕事が、ここでは幸いした。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ #
by motoki8787
| 2018-12-09 19:06
| 見た・観た・聴いた
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2018年 09月 25日
小鹿田焼は九州のほぼ中央、日田市の皿山地区で作られている。市内から車で 30分ほど山あいを進むと、集落が忽然と姿を現わす。 集落の規模は小さく、頂部から右左にカーブする坂道を下り歩くと5分もかか らず外れに至る。集落は僅か13戸からなり、3戸(酒屋、大工、蕎麦屋)を除き、 残り10戸はすべて窯元。しかも、血のつながりが濃く、窯元は組合をつくり、外 部からの職人流入を退ける。 各窯元は屋号を持つが、独自の作家活動は許されない。だから陶器の裏側に刻 印はないが、その代わり、ここから出荷されるすべてに「小鹿田焼」の商標がつ く。ここでは民藝がいまだに息づいている。 水力による唐臼、足で回す蹴ろくろ、薪を使った登り窯、小鹿田焼には機械が 使われない。これだけの山奥、しかも僅か10戸の閉鎖的な共同体が、昔ながらの 方法により今日も生産を続けていることに驚く。 当たり前だが、山間集落は渓流のあるところに発生する。 水量が少ない渓流でも、堰き止めると水が溜まり、堰の高さまで水位が上がる。 だから堰が高いほど水位は上がり、配水の守備範囲は広がる。 この集落にも大小たくさんの堰が築造され、生活用水、そして唐臼の動力源と して利水されている。 唐臼小屋の上流には必ず堰がある。
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by motoki8787
| 2018-09-25 11:55
| 風景・街あるき
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2018年 08月 15日
能登半島は北に突出する印象だが、実は上半分が大きく東側へ傾いている。その 内側(南東)は富山湾を囲み、海は穏やか。対して、反対側(北西)は風が強く、 季節を問わず海には白浪がたつ。とりわけ冬は大陸から季節風が猛烈に吹き降ろ し、海は荒れ狂う。このような厳しい気候風土、海沿いの集落にはどこから伝わ ったのか、古くから生活を守る工夫があった。 輪島の南西約10Kmに大沢集落、上大沢集落がある。季節風のあまりの強さに、防 風林が育たないのだろう、「間垣(まがき)」という高さ5mほどの工作物(防風 垣)が集落を囲み、独特な景観をつくる。屋根が隠れてしまうから、もし沖合か ら眺めると城壁の連なりのようにも見え、日本の風景としては珍しい。 「間垣」には杉丸太と、近くに自生するニガタケが利用される。丸太を地面に建 て(掘立柱)、そこに横桟を架け渡しニガタケを葺く。「間垣」は住戸ごとに作 られるから骨の組み方はいろいろだが、表側から見ると高さは揃い、連続面を形 を遮断するものではなく、そのエネルギーを柔らかに抑える仕掛けと言える。 隙間のない防風壁の場合、風下に渦巻きが生じ風が滞留し、また気流の剥離がよ り強い強風部分を生み出すという。一方、「間垣」のように隙間のある場合、風 速が大幅に減じることはないものの、風速が一定程度減少する領域が広範囲に生 まれるようだ。 小径のタケを利用した防風垣は、台風直撃を受ける九州地方でも畑作地を守る目 的で作られるが、高さが5mにも及び、集落そのものを囲むものは、能登の「間 垣」の他に見当たらない。 ニガタケは3年に一度、杉丸太は10年に一度の更新を要する。このような短期間 の更新、しかも手仕事による更新を前提とするインフラストラクチュアは、今の 時代、あからさまに敬遠される。しかし、「間垣」の文化的景観としての価値は 高く、長く存続してほしい。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ #
by motoki8787
| 2018-08-15 16:30
| 風景・街あるき
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